バンドワゴン効果とは、「他の人がやっているから」という理由で、ある行動や結論を取る傾向が強くなることです。
この現象は、経済、政治、心理などさまざまな分野で見られ、金融市場も同様です。
経済学におけるバンドワゴン効果
バンドワゴン効果が経済学でどのように表現されているかを理解することは、その効果の大きさを示す上で重要です。
シカゴ大学の著名な経済学者であるゲイリー・ベッカーは、バンドワゴン効果は需要曲線を上向きに反転させるほど強力であると主張しました。
一般的な需要曲線は、価格が上昇すると需要が減少する下降傾斜型です。しかし、ベッカーの仮説では、需要曲線が上向きであれば、価格が上昇しても需要が増加することになる。
下図は、この2つの需要曲線を示したものです。
平時では価格が上がると需要は下がりますが、バンドワゴン効果があると価格が上がっても需要が伸びるという現象が起こります。
金融市場におけるバンドワゴン効果
バンドワゴン効果は、金融市場では2つの方法で作用します。
1、価格バブル
金融市場では、特に人気のある証券の価格が上昇し続ける「価格バブル」がしばしば発生します。
価格がファンダメンタルズに見合った水準を超えて上昇すると、その証券は非常に過大評価されることになります。これは、多くの投資家が列をなして証券を購入することで価格が上昇し、その結果、さらに多くの投資家が集まるために起こる現象です。
2、流動性の穴
予想外のニュースやイベントが発生した場合、市場参加者は状況が明らかになるまで取引を停止する傾向があります。そのため、市場の買い手と売り手の数が減り、流動性が著しく低下します。
流動性の欠如は、適正価格を歪め、資産価格の大規模なシフトを引き起こします。そのような価格変動はパニックの拡大につながり、さらに不確実性を高めて一方的な相場を引き起こします。
バンドワゴン効果の実例
SNAP Inc.の新規株式公開
テクノロジー企業であるSNAP Inc.は、2017年初頭に新規株式公開(IPO)を行いました。このIPOは、Amazon、NVIDIA、Netflixなどのテクノロジー企業の株価が大幅に上昇したグレート・テクノロジー・ラリーの余波を受けたものでした。
SNAP社の株式は、1株あたり17ドルの価格で提供されました。その後、1日で44%も上昇して初日で24ドルまで達しました。さらにIPOの2日後には27ドルまで上昇し、当初の公募価格である17ドルに対して約58%の上昇となりました。
しかし、その後数日間は20ドル前後まで下落しました。上記の一連の出来事は、バンドワゴン効果の一例です。投資家は、他の投資家の後を追って、上昇の可能性を秘めたテクノロジー企業に投資し、2日間にわたって価格を上げ続けたのです
ブラックマンデー
1987年10月19日、「ブラックマンデー」と呼ばれるように、ダウ・ジョーンズ工業指数が1日で22%も下落し史上最大の市場暴落となりました。
この暴落の原因を探るためにアナリストたちは経済ニュース、個人投資家の動向から保険会社の運用戦略まで、様々な原因を調査しました。
しかし、経済学者のロバート・シラー氏が暴落後に行った調査では、バンドワゴン効果が指摘されています。
シラーが行った調査ではほとんどの参加者が具体的な理由ではなく、暴落が迫っているという予想で株を売買したと指摘しています。そこにはプロの投資家、保険会社、銀行も含まれていました。